リンパマッサージ~ダイエットの疑似医学用語解説~
リンパマッサージとは何か
「リンパマッサージ」と言う言葉は、誰もが一度は聞いたことがあるものだと思います。これは一般的には、以下のようなに考えられています。
「リンパの流れが停滞してしまうと、体にむくみなどが起こりやすくなる。
またリンパには、免疫機能があったりするので、これらをきちんと循環させることによって、肌の調子を整え、健康的な体を作ることができる。
また、血行の促進を促したり、治癒力を高めたり、アンチエイジングに効果を示したり、ダイエットを効率的に進めることができる」
この定義が正しいのかどうか、一つずつ見ていきましょう。
そもそもリンパって?
人間の代謝の中心を担っているのが血液ですが、血液を補佐するかのように全身にはリンパ管が走り、その中にはリンパ液が通っています。
リンパ液はもともと血液中の血しょうという成分なのですが、それが血管がら染み出してリンパ液になるといわれています。
リンパ液は場合に外部からの細菌やウィルスに対して抗体をつくったり、体の老廃物を運ぶ役割があります。
リンパは筋肉の動きに応じて流れますので、体を動かさないとリンパの流れが滞ってしまいます。リンパの流れが滞ると老廃物がたまりむくみや肩こり、肥満の原因になるといわれています。
「リンパの役目」は正しいけれど……
上で述べているなかで、「リンパの役割」は正しいものだと言えます。リンパには免疫効果がありますし、これが健康に対して大きな役割を果たしていることも確かです。また医療の分野においても、「リンパドレナージ(リンパマッサージ)」という方法は存在します。
乳がんや前立腺がんの手術後に手足がむくんだ状態になり、見た目だけでなく、感染症のリスクも大きくなりますので、リンパ浮腫は医学上は大問題であることは間違いありません。非常に重症の場合は、リンパ管を手術する(顕微鏡を使用した非常に難易度の高い治療)を行うこともありますが、まずはリンパドレナージュ(リンパドレナージ)という方法を試します。
表面に体液が溜まった状態のリンパ管をマッサージによって深い傷がついていないリンパ管に押し戻すようなマッサージです。これは見よう見まねで行うことは危険ですので、この治療は「リンパ浮腫指導管理料」として健康保険の対象となっていてますが、リンパマッサージの技術をマスターした人が少ないことが問題になっています。
表面に体液が溜まった状態のリンパ管をマッサージによって深い傷がついていないリンパ管に押し戻すようなマッサージです。
しかしながら、これらのような医学的見地に基づいた「リンパマッサージ」が、美容業界、特にダイエット業界で行われているか、というと、甚だ疑問が残ります。
リンパ液を流すことに、マッサージだけがとりたてて有用である、という医学的な根拠はありません。リンパが流れる速度というのは非常に遅いものですし、それがマッサージによって早くなる、というエビデンスもないのです。
リンパマッサージでダイエットができたという説
ただ、なかには「リンパマッサージをうけてダイエットができた」とする人もいます。これにはいくつかの理由があり、その一つが、プラシーボ効果でしょう。効果がある、とされていることを試すことによって、たとえ医学的な根拠はなかったとしても、実際にダイエットできてしまうことは確かにあります。
そのほかに、「リンパマッサージを受けることによってむくみがとれたから、ダイエットをしたように見えた」というものがあります。
マッサージを受ければ、水分が一時的に抜けることになります。
リンパマッサージを受ける直前と受けた直後の写真をとれば、後者の方が痩せて見えるのはある意味当然なのです。
もちろん、これらの効果があるから、という理由でリンパマッサージを選ぶことは否定されることではありません。しかし「リンパマッサージだから特別な効果があるのだ」と考えるのは間違いです。そこに医学的で明確な根拠を求めることは非常に難しいからです。
また、これはあくまで一例ですが、リンパマッサージなどのような「マッサージ」を受けすぎて、腫れなどが出てしまう人もいます。このようなことになってしまえば本末転倒ですので、すぐに中止するようにしましょう。
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